10日午前4時56分ごろ、熊本県小国町宮原で「建物が燃えている」と近くの住民とみられる男性から119番通報があった。
阿蘇広域消防本部によると、店舗や住宅約20棟の建物の多くが全焼したとみられ、約5時間後に鎮火した。駆けつけた消防団の男性が指に軽傷を負ったが、今のところ住民にけがの情報は入っていない。火災の詳しい状況を調べている。
現場は小国町役場から南に100メートルほどの店舗や住宅が密集する一帯。住民らによると、古い商店街で、かつては映画館や飲食店が並ぶ町一番の繁華街だったという。現在は営業する店はほとんどなく、木造の住居が道の両側に並ぶ。
NTTドコモによると、この火事で、現場付近に設置してある通信ケーブルが焼損し、小国町のほか、南小国町や阿蘇市の一部で電話やメールなどの通信ができない状態となっている。
近くに住む自営業山田吉人さん(52)は午前5時ごろ、消防のサイレンと火災を知らせる防災無線の放送で目が覚めた。外が明るく、出てみると住宅が火だるまのようになって燃えていた。延焼が速く、途中でくい止めようと、近所の人たちと近くにある消火栓からホースを引っ張ってきて手前の家にかけたという。「電線がバチバチと言ってすごかった。とにかく火が来るのを少しでもくい止めようと、皆で必死になって消火した」と話した。
近所の介護事業所職員河津一子さん(59)も防災無線で目が覚めた。外に出ると2軒隣の民家が燃えており、1階に寝ていた両親を起こして着の身着のままで逃げたという。「こんな大きな火事は初めて。気が動転していて何も考えられず、火が怖くて足が震えていた」と話した。
少し離れた場所から様子を見ていたという長谷部博信さん(66)は「燃え広がるのが早かった。かなり古い木造の家なので、そのせいではないか。プロパンガスが破裂するようなドカーンという音が断続的に響いていたのが印象に残っている」と話した。