指定暴力団工藤会(北九州市)系組幹部の裁判員裁判をめぐり、裁判員に声をかけて脅したとして、裁判員法違反(威迫・請託)罪に問われた男2人の判決が6日午後、福岡地裁であった。
【特集】工藤会
中田幹人裁判長は「裁判員制度の根幹を揺るがしかねない」として、会社員中村公一被告(41)に懲役1年執行猶予3年(求刑懲役1年)、元工藤会系組員の楠本利美被告(41)に懲役9カ月執行猶予3年(求刑懲役1年)をそれぞれ言い渡した。
2009年に裁判員制度が始まってから、裁判員法違反罪での有罪判決は初めて。
起訴状によると、2人は昨年5月10日、地裁小倉支部で知人の組幹部の初公判を傍聴。閉廷後、近くの路上で40代の女性裁判員2人に、中村被告は「あんたら裁判員やろ」「顔は覚えとるけね。よろしくね」、楠本被告は「もうある程度刑は決まっとるんやろ」などと声をかけ、裁判で有利な審判をするように脅したり頼んだりしたとされる。
公判で検察側は「怖くて眠れなかった。被告人質問で質問もできなかった」とする女性裁判員の供述調書を読み上げ、「裁判員に大きな不安感や恐怖心を与えた。裁判員制度の根幹を揺るがす」と指摘した。
中村被告は公判で起訴内容を認めた。楠本被告の弁護側は「裁判員も大変やね」と声をかけた程度で、威迫や請託の意図はなかったとし、無罪を訴えた。
組幹部の公判では、声かけがあった後、補充を含む裁判員計5人が辞退。地裁支部は裁判員を除外して裁判官だけで審理を再開し、実刑判決を言い渡した。(張守男、井上怜)