熊本地震後の活動を紹介する熊本大の佐藤嘉洋氏=5月28日、熊本市、福岡亜純撮影
■熊本地震×ヤフー検索データ
震災時の検索データ、生かすには? 熊本で研究者ら知恵
熊本地震に関する検索データを分析し防災や支援にいかす道を探ろうと、熊本大学で5月28日に開かれた催しでは、熊本大チーム、弁護士チーム、YMCAチーム、JVOADチーム(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)、朝日新聞記者チームの計5チームが地震後の経験をもとに分析したデータから、様々な課題を指摘し、新たなアイデアを披露した。熊本大チームの発表内容を紹介する。
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熊本県益城町の応急仮設住宅で被災者の悩みや住まいの意向の聞き取り調査などを続けてきた熊本大学のチームは、埋もれたニーズを掘り起こし、行政が提供する情報とのギャップなどを探る視点でヤフーの検索データを分析した。
まず、県内からの検索で熊本地震発生前の1年間に比べ発生後1年間に高い比率で上昇した言葉を独自の計算方法で抽出。「気象情報 地震」や「罹災(りさい)証明書」などに続き、「南海トラフ地震」や「地震 予言」などの言葉が上位だった。
次に全国的な検索の傾向と比べたところ、県内では「断水」「地鳴り」「避難勧告」といった言葉の検索数の上昇率が特に高かったのに対し、「南海トラフ」や「地震 予言」などは高くなかった。
同大の復興プロジェクトに関わっている佐藤嘉洋研究員は「県内ではより切迫した情報が求められたのに対し、県外では次の地震はどこで起きるのかに関心が集まったのでは」との見方を示した。
次に、県内で「益城町」という言葉と一緒に検索された言葉をランキング化。「益城町役場」や「益城町ホームページ」はずっと上位で推移したのに対し「益城町 災害ボランティアセンター」や「益城町 仮設住宅」などは徐々に下がったといい、関心の低下を表していると指摘した。
さらに「益城町」と一緒に検索された言葉で「災害公営住宅」が少なかったことに注目。同大の復興支援プロジェクトの聞き取りでは、町内の応急仮設住宅の約8割にあたる1196戸の多くが「災害公営住宅」という言葉に関心を示していたという。「ネットで検索をしない高齢者や、仮設に移ってネット環境をなくした被災者のニーズが表れていないのではないか」と佐藤さん。
一方、県内で「支援」という言葉を含めて特に検索されたのは「住宅金融支援機構」や「日本学生支援機構」などが多く、佐藤さんは「住宅ローンがある子育て世代や大学生など、若い世代が支援の情報を探している」と推測した。
こうしたことから、佐藤さんは「検索データに表れるのは自分の課題の答えがネットにあると想定し、自分で解決しようとする若年層のニーズ」と指摘。「データで見えづらい深刻な悩みを把握し、支援につなげることが大切」と語った。(池上桃子)