海上衝突予防法が定めるルール
米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に所属するイージス駆逐艦フィッツジェラルドの乗組員7人が行方不明となった衝突事故で、数人の遺体が18日、艦内から発見された。激しく傷ついた同艦の前で、米第7艦隊のジョセフ・アーコイン司令官は、「彼らを失ったことは悲しい」と哀悼の意を表し、「家族や他の乗組員への支援に集中したい」などと語った。
「船が受けたダメージは非常に深刻だったが、乗組員たちは非常に冷静だった。英雄的な行為で、船が沈没する危険を免れた」。船体に大きな穴があいて居住区や機械室が浸水した状況を説明しながら、同司令官は乗組員をたたえた。艦長室も被害を受け、艦長も負傷した。「生きているのが奇跡的」とも語った。
一方、事故原因については「わからない」「臆測はしない」と慎重に答えた。調査を指揮する将官を任命したほか、米沿岸警備隊も調べるという。日本の捜査には「必要とあれば協力する」と述べるにとどめた。
フィリピン船籍のコンテナ貨物船は、イージス艦の右後方から衝突したとみられている。ただ、どちらに衝突の回避義務があったのかは、両船の衝突前の針路や速度、見張りが十分だったのかが関係してくる。
「2隻は同じ方向に動いていた」という貨物船側の証言も手がかりになる。海上衝突予防法は、「追い越し」の場合には追い越す側に、十分離れるまで相手の船を妨害しないよう求めるなどのルールを定めている。
第3管区海上保安本部(横浜市)や国の運輸安全委員会は、18日も貨物船の船長や乗組員から聴取を進めた。だが、日米地位協定では公務中の米軍人・軍属の事件や事故については第1次裁判権が米側にある。
海保幹部は「イージス艦は米軍の調査が先行するので、日本側が捜査できるようになるまで時間がかかるだろう。当面は淡々と貨物船側の捜査をするだけだ」と語った。(前田基行、石原幸宗)