縄文時代の土器や土偶に熱視線を投げかけ、縄文人の心に思いをはせる、遊び心満載の無料雑誌「縄文ZINE(ジン)」(不定期刊)がある。縄文好きが高じて創刊に至ったという編集長と、上野の東京国立博物館を訪れ、特別展「縄文――1万年の美の鼓動」(朝日新聞社など主催)を見た。 専門記者も「おやっ」 縄文展、深鉢形土器が実はすごい 片桐仁さん「土器も土偶もひとつの宇宙」 上野で縄文展 縄文のビーナスと仮面の女神登場 縄文展に国宝全て集結 最新号の特集は「恋する縄文」 最新の第8号(6月刊、3万部)は元SKE48の加藤るみさんが表紙で、特集は「恋する縄文」。妊娠中だったタレント藤岡みなみさんが「土偶が妊婦に見える」と考察するエッセーや、街中で若い女性らに土偶のポーズをとってもらう写真連載などがある。1970年代~80年代のサブカル誌「ビックリハウス」を思わせる誌面だ。 編集長は、書籍装丁などのデザイナー望月昭秀さん(46)。8年ほど前、遺跡巡りを始めると、縄文熱が高まった。魅力を語り合える人は周囲になく、「縄文」というだけで半笑いの対象にされてしまう。ならば同好の士に届けと、雑誌を作った。誌名は「縄文人」と「縄文の雑誌(マガジン)」をかけた。 創刊号(2015年8月刊)は6千部を刷り、現在、全国300の書店や博物館で配布している。毎号ほぼ赤字のため、誌上で文具メーカーのコクヨに「(石器に使われる)黒曜石とかけた広告を出しませんか」など、大手企業と縄文を半分遊び半分本気で結びつけて広告出稿を呼びかけたが反応はまだないという。 「火焰(かえん)型土器だけではない」 今回の縄文展をすでに2回観覧している望月さんは、「土器の展示の仕方に、『縄文は火焰型土器だけではないんだよ』という学芸員らの意図がうかがえる」と話す。 入場すると、曽利式土器である深鉢形土器が配置されている。「美のうねり」と題し土器を見せる章の最初には、縄目文様が豊かな関山式土器の一群を置く。同時代の各国の土器と比較するコーナーでは、「日本代表」として、躍動的な造形の焼町土器を送り込んでいる。 望月さんは「曽利式は流麗な模様で洗練されている。今回注目されてうれしいです。関山式は縄目の文様への執着がすごいうえに、形がよく品がいい。この章のトップバッターとは渋い」と感心する。 「焼町土器にはドーナツのような穴があって、目にも顔にも見える。見え方のおもしろさに、びっくりしている来場者も多いようです」と声を弾ませる。 とはいえ、土器の大スターはやはり火焰型。望月さんも「縄文の造形美の最たるものです」と一目を置く。さらに火焰型土器の各個体の見た目がそっくりなことに注目する。「土器の構成要素が厳格にルール化されている。よく統制されたなかで作られたのかもしれません」 生きることに真剣に向き合う哲学 「日用の道具にここまで凝るんですね」と感想を述べると、望月さんは「それは現代人の視線ではないでしょうか」と静かに語り始めた。「調理や食事をする器に重きを置いたのは、日々の生活こそを大切にしたためでは。生きることに真剣に向き合う哲学を感じます」 こうした想像や推理をすることが縄文の魅力という。「歴史は、大事件や英雄を巡って語られることが多く、庶民の生活は見えない。まだお金のない時代、人々は何に価値を置いていたのか。それを考えて現代の生活を振り返ると、癒やしや気付きになるかもしれません」 土偶のポーズ=ドグモ 国宝が並ぶ展示室。スタイル抜群の「土偶 縄文の女神」について、望月さんは「両足が微妙にずれていて、動的な印象を受けます」。なるほど「土偶 縄文のビーナス」も左足がやや前に出ている。 望月さんが土偶のポーズに詳しいのは、雑誌で「ドグモ」(土偶モデル)写真を連載しているからだ。街中で読者らに土偶のいろんなポーズを取ってもらい、チャーミングな企画と好評を呼んでいる。「土偶というと、ダサいイメージだったと思います。縄文を現代に持ってきても楽しめることを提示したところ、おもしろがってもらっているようです」 できの悪い土器の個性にドキッ 展示を見終えた望月さんは、「逸品が並んだ素晴らしい展覧会ですが、地方の考古館もおもしろいんですよ」と打ち明けた。「信じられないくらいできの悪い土器や土偶があるんです。でも、下手さにこそ個性が表れる。その個性がわかると、作った人と心が交流するような気持ちになれるんです」 「縄文ZINE」の配布場所は公式サイト( http://jomonzine.com/
)から。第1~4号は合本にして販売中(税別1480円)。 ◇ 東京国立博物館でビアガーデン 8月3、4日午前9時30分~午後9時には、東京国立博物館本館前庭に野外カフェを設ける「トーハク ビアナイト!」の催しがある。午後4時からはアルコールの提供があり、縄文の国宝全6件の出土地域からクラフトビール(800円、各種1日50本限定)が販売される。 特別展「縄文」は9月2日[日]まで、月曜休館(8月13日は開館)。午前9時30分~午後5時(金・土曜は9時、日曜は6時まで)。一般1600円、大学生1200円、高校生900円、中学生以下無料。問い合わせは、ハローダイヤル(03・5777・8600)。詳細は公式サイト( http://jomon-kodo.jp/
)。(曺喜郁) |
そそる土器は?土偶は?縄文ZINE編集長と歩く縄文展
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