(8日、高校野球 金足農5―1鹿児島実)
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勝負どころと見れば、球質を一気に変えた。「場面ごとに、3段階のギアを入れ替えた」と金足農の吉田が振り返る。
例えば六回。初球は138キロ。2死二、三塁となった最後は、145キロの高めのボール球を振らせて三振に。「思い切り力を込めた」という1球だった。
調子は万全ではなかった。「直球は良かったけど、変化球が決まらなくて」。鹿児島実打線が低めに外れる変化球を見極めてきたことも想定外だった。
ただ、ここで慌てずにギアを上げ下げする。走者がいない時は「球の切れ」に集中する1速。走者一塁では、切れに球速を加えた2速。そして、得点圏に走者を背負った時だけ、「制球が甘くなっても全力で投げる」という3速。出力を自在に変えて、ねじ伏せた。
実際、「ランナーが出た途端に速くなった」と鹿児島実の4番西。「低いなと思っても真ん中に来るし、高めのストライクと思ったら、とんでもなく高いボール球。手元で上がってくる。あんな球、見たことがない」。高めの直球を注意点の一つとしてチームで共有していたが、吉田のボールは予想を上回っていた。
毎回走者を背負ったが、終わってみれば1失点で完投。「3速」は最速148キロをマーク、14三振を奪った。157球を投じたとあって、「いつもより疲れた」と吉田は苦笑する。それでも、「今日は30点。次はもっと良い投球ができると思います」。大会屈指と言われる右腕の夏が始まった。(吉永岳央)