(17日、高校野球 近江9-4常葉大菊川)
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伝統の「フルスイング」に加え、「ノーサイン野球」で16強まで勝ち上がってきた常葉大菊川(静岡)。17日の3回戦で近江(滋賀)の好左腕を打ち崩せず敗れ、準優勝した2008年以来となるベスト8進出はならなかった。
七回表、1点を返し、「ノーサイン」の見せ場がやって来た。なお1死一、三塁で左打席に立った榛村大吾君(3年)はベンチに目をやった。みんな笑顔を向けていた。「任せてくれているんだな」
榛村君が選んだのは強攻策。ゴロが高くバウンドして投前へ。一塁送球の間に三塁走者の根来龍真君(3年)が本塁へ頭から滑り込んだ。アウトになったが、チームでは「次の塁を狙ってのアウトはOK」を掲げてきた。先発して打線の援護を待ち続けていた榛村君は「1点を取ろうとする気持ちを感じたから、うれしかった」。
8点差に広げられて迎えた九回表。信条とする「フルスイング」を貫いた。
先頭の主将・奈良間大己君(3年)が左翼フェンス直撃の打球を放つと俊足を飛ばして三塁打に。1死後に犠飛で1点を返し、4番根来君も「当てにいくのではなく、とにかくフルスイング。中途半端なスイングはスタンドにいる後輩に見せられない」と強振し、三塁打で続いた。そして5番伊藤勝仁君(2年)が左越え2点本塁打を放ってこの回、3点を奪い、最後に意地を見せた。
根来君は「大会前、ノーサインはいい評価じゃなかった。でも、甲子園で『こういう野球もある』と見せられたのは間違いない」と言った。「菊川野球の象徴」と高橋利和監督(32)が評する奈良間君は「甲子園に来てからチームの力が上がった。みんな全力を出し切った」。いま何をするべきか――。自分たちで考えて臨む姿は鮮烈な印象を残し、甲子園を去る。(堀之内健史、辻健治)