(20日、高校野球 金足農2-1日大三)
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「今度は、自分が救う番」。正念場で金足農の吉田は笑みを浮かべた。
1点リードで迎えた九回。1死からボテボテのゴロを打たせた。吉田が捕ったが、一塁手もゴロを捕ろうとしてベースから離れていた。セーフ。次の打球は三塁手が横っ飛びで捕ったが一塁は間に合わない。いずれも内野安打で一、二塁となった。
「みんなが焦っていると感じた」。笑顔の意味は、「落ち着け」のメッセージだった。
3回戦は高橋の逆転3ラン、準々決勝は斎藤のサヨナラ2点スクイズと、日替わりヒーローで勝ち上がってきた。「打線に助けてもらった」。今こそ、エースが恩返しをする時だ。
140キロを超える直球を、力任せではなく、コースを狙って投げる。柳沢を左飛。最後は金子を中飛に仕留めた。
ここで直球勝負が通じたのは、「仲間のため」の思いを込めただけではない。この試合、カットボールとツーシームを多投した。「日大三は真っすぐを狙っていた。だから、直球に近い変化球でいこうと」。八回2死から1点を失った後、後続を空振り三振に仕留めたのも外角へのツーシーム。散々小さな変化を印象づけておいて、勝負どころは直球でねじ伏せた。
奪った三振は7。2桁奪三振は4試合でストップしたが、球数はこれまでで最少の134。「だから、疲れはあんまり。これが自分の本来の投球です」
東北勢初の頂点へ。すでに敗れた聖光学院(福島)の主将矢吹や八戸学院光星(青森)の主将長南から「お前たちしかいない」とメッセージを託された。
今大会、749球を投げているエースは「東北と、秋田の夢を背負って挑みます。最後まで笑っていられる夏にしたい」。
いざ決勝へ。(吉永岳央)