甲子園で「5連続敬遠」された後、監督への思いやりを見せた――。石川県の星稜高校から夏の全国大会に出場した元大リーガー松井秀喜さん(44)のこんなエピソードを20日、同校野球部名誉監督の山下智茂さん(73)が披露した。
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新聞週間にあわせて大阪市中央区の大阪商工会議所で開かれた「記念の集い」。山下さんは「高校野球っておもしろい」と題して朝日放送ラジオパーソナリティーの道上(どうじょう)洋三さん(75)と対談し、松井さんとの秘話を次々と明かした。
山下さんは1968年に野球部監督に就任。2005年に勇退するまで、チームを春夏計25回の甲子園に導いた。
不動の4番打者として松井さんを擁し、日本一を狙った92年夏の甲子園。星稜は2回戦で明徳義塾(高知)と対戦した。松井さんが5打席連続で敬遠され、チームは2―3で惜敗。高校野球ファンを二分する議論を呼んだ。
山下さんは当時を振り返り、松井さんとのエピソードを紹介した。
2月生まれの山下さんはその年、選手たちから誕生日プレゼントを贈られた際に「夏はもっと大きなプレゼント(優勝旗)をします」と言われていた。明徳義塾に敗れた後、松井さんがベンチで山下さんのもとに駆け寄り、「すいません。大きなプレゼントはだめでした」と謝ったという。「敬遠されて自分が悔しいのに、僕にそういうことを言えるようなすごい男になってくれた。指導者としてすごく感動した」と山下さん。
また、松井さんの高校最後の試合となった同年秋の国体決勝の尽誠学園(香川)戦では、山下さんが松井さんの最後の打席で「本塁打を打て」とサインを出すと、松井さんが本当に本塁打を放ってみせたという。山下さんが「高校時代に24回くらいあのサインを出したが、すべて本塁打を打った」と明かすと、400人以上の観衆から驚きの声が上がった。
山下さんはさらに、今年100回記念大会だった夏の甲子園についても語った。松井さんが始球式を務めた開幕試合を、偶然にも星稜が引き当てた。
始球式を前に松井さんに「絶対に内角に投げて(打者に)ぶつけるなよ」と念を押したところ、松井さんの球は外角へのワンバウンドに。「松井は力んでいたけど、(星稜の)捕手がうまく捕って、暴投に見せなかったのが素晴らしかった」と話し、会場の笑いを誘った。
記念の集いは、日本新聞協会と在阪の新聞・通信・放送20社が主催。山下さんと道上さんの対談のほか、11月30日公開の映画「かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発」の試写会もあった。(遠藤隆史)