株式など金融商品と、貴金属などの商品先物を一元的に扱う「総合取引所」の実現に向け、日本取引所グループ(JPX)と東京商品取引所(東商取、TOCOM)が統合の検討に入る。総合取引所は10年以上前に政府が打ち出し、検討が続くが実現していない。政府は改めて早期実現を求めており、今後の協議の行方が注目される。
JPXは東京証券取引所と大阪取引所を傘下に持ち、株式の現物取引やデリバティブ(金融派生商品)取引を手がける。東商取は原油や金、穀物などの商品先物を扱う。両者は23日、総合取引所化に向けた協議に入るための秘密保持契約を結んだと発表。今後は、東商取がJPXにぶら下がる形や、先物取引で親和性が高い大阪取引所との統合などが検討されそうだ。
総合取引所を巡っては、今月の政府の規制改革推進会議で緊急に取り組むべき「重点項目」として盛り込まれたばかりだった。
両者が統合すれば、証券会社など市場参加者が別々に求められる参加者資格を一体化でき、手続きが簡素化できる。双方のノウハウを融合し、新たなデリバティブ取引などで投資を呼び込むことも期待できる。
総合取引所化は、金融センターとして日本の魅力を高めるには不可欠とされてきた。2007年に政府の経済財政諮問会議で打ち出され、その後成長戦略にも盛り込まれ続けた。しかし監督官庁がJPXは金融庁、東商取は経済産業省と農林水産省に分かれ、省庁の思惑の違いなどから実現しないままだ。
総合取引所化へ向けた「器」はできつつある。東証と大阪証券取引所が13年に統合してJPXとなり、同年、東京工業品取引所が東京穀物商品取引所から農産物先物取引を引き継いで東商取となった。JPX首脳は「反対する理由はない」としつつ、「向こう(省庁)の方針がまとまらない」という。「結論ありきではなく、低調な商品先物市場の活性化策も含めた議論が重要」(経産省幹部)との声もあり、統合協議がすんなり進むかは見通せない。(新宅あゆみ、久保智)