奇抜な画風で人気の江戸期の画家、伊藤若冲(じゃくちゅう)や長沢芦雪(ろせつ)が描いたものの所在不明だった作品が見つかり、来年2月9日から東京都美術館(東京・上野)の「奇想の系譜展」(朝日新聞社共催)で展示される。29日に概要が発表された。
1927年の記録以後、存在が分からなくなっていた若冲の「梔子(くちなし)雄鶏図」(個人蔵)は、細密描写と極彩色で知られる円熟期に比べてためらいが見られる画風で、30代の希少な初期作とみられる。監修者の山下裕二・明治学院大教授は「クチナシと鶏の組みあわせは他に例がない」と解説した。展覧会準備中に新たに見つかった若冲、伝岩佐又兵衛の作品もあるという。
「奇想の系譜」は、美術史家の辻惟雄(のぶお)さん(86)が70年に著した本の名前。当時は傍流扱いだった若冲や曾我蕭白(しょうはく)ら近世画家に光を当て、現在の若冲ブーム、江戸絵画ブームにつながった。展覧会では同書で取り上げられた6人に、白隠慧鶴(はくいんえかく)、鈴木其一(きいつ)を加えた約100点を紹介する(展示替えあり)。本展特別顧問を務める辻さんは「期待に胸を躍らせている」と語った。4月7日まで。(編集委員・大西若人)