産業革新投資機構(JIC)の田中正明社長ら民間出身の取締役9人全員が辞任を表明したことは、JICと対立してきた経済産業省にとって大きな誤算となった。頼みの社外取締役にも三行半(みくだりはん)を突きつけられ、米国のバイオ・創薬企業に投資する第1号の認可ファンド(子ファンド)は、経産省の意に反して田中氏が清算を表明した。乱立した官民ファンドをJICの傘下に集約する構想にも狂いが生じそうだ。
JICが導入をめざした高額報酬を認めないと発表し、田中氏との対立が決定的となった3日以降、経産省は田中氏を除く民間出身の取締役に対する切り崩し工作を進めていた。田中氏だけを辞任に追い込み、事態を収拾する算段だった。
だが、田中氏は10日、東京・丸の内で開いた記者会見で、取締役11人のうち経産、財務両省出身の常務2人を除く9人が辞任すると表明。JICは事実上の休止状態に追い込まれた。経産省から1週間前に解任もちらつかされた田中氏の最大級の「反撃」だった。
経産省にとって、社外取締役で取締役会議長の坂根正弘氏(コマツ相談役)も辞任を表明したのはとくに大きな誤算だった。経産省の審議会委員を多く務め、田中氏との対立を巡って「日々相談していた」(幹部)相手だったからだ。
実は、9人全員の辞任表明に影…