震災や病気、事故などで親を失い、奨学金で進学した宮城県内の大学生ら約20人が、支援してくれた「あしなが育英会」に恩返しをしようと、街頭で寄付を募っている。その一人、大学2年の阿部佐那さん(19)は震災で父を亡くした。その後進んだのは父の母校。そこで若き父の姿を知った。
「みんなが平等に暮らせる世の中に――」。仙台駅前で4月27日、阿部さんは募金箱を両手に持って呼びかけた。小雨が降る中、協力してくれた人には笑顔で深く頭を下げた。
女川町に住んでいた2011年、東日本大震災で父の義彦さん(当時42)を失った。当時は小学5年生。震災前夜、ささいなことで父とけんかになり、「もうバトンやめる。PLにも行かない」と言った。大阪府のPL学園高校は父の母校で、幼い頃から続けてきたバトントワリングの強豪。父から「一生の友達ができた」と勧められ、中学から進学しようと決めていた。仕事で忙しい父の気を引こうと、心にもない言葉が口をついた。
「なんで。行ってよ」。そう言…