九州から東日本の太平洋岸にかけて停滞する梅雨前線が活発化し、九州南部は3日も豪雨に見舞われた。鹿児島、宮崎両県で記録的な雨量を観測するなど、熊本県を合わせた3県の196万人超に避難指示・勧告が出た。梅雨前線は4日も活発な見通しで、気象庁は未明にも大雨特別警報を出す可能性があるという。
ピークは夜か、猛烈な雨の見込み 過去の大災害に匹敵
気象庁によると3日は梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、前線が活発化。鹿児島県鹿屋市では3日正午ごろ、1時間雨量81ミリを観測するなど各地で激しい雨が降った。6月28日の降り始めから3日午後10時までの総雨量は宮崎県えびの市で1075・5ミリ、鹿児島県鹿屋市で873・5ミリ、同県薩摩川内市で834ミリ、熊本県湯前町で610・5ミリに達した。
警戒レベル4にあたる避難指示(緊急)や避難勧告は、いずれも3日夕時点で鹿児島県では鹿児島市内全域の約28万世帯59万人を含む21市町の計約66万世帯138万人に、宮崎県でも宮崎市など10市町の計約14万世帯、30万人に出た。熊本県では宇土市など14市町村の計約12万世帯、28万人に避難勧告が出た。
鹿児島県薩摩川内市入来町の大馬越では3日朝、住民の女性(80)が川の水位を見に行って転倒し、肩の骨が折れるけがをした。
鹿児島県では土砂崩れが相次ぎ、鹿児島市南郡元町ではJR南鹿児島駅近くの斜面が高さ約20メートル、幅約10メートルにわたって崩れ落ちた。鹿児島市電は現場に近い区間を運休にした。
鹿児島市田上8丁目では「家が埋まった」と通報があった。市によると、倉庫2棟が埋まり、近くの家屋1棟も被害にあったとみられるが、住民は避難して無事だった。曽於市大隅町岩川では崩れた土砂に車2台が巻き込まれ、うち1台が2メートル下に転落。運転していた人は自力で脱出して無事だった。志布志市有明町でも軽乗用車が土砂に巻き込まれて横転し、乗っていた女性(33)と9歳と6歳の男児2人が軽傷を負った。
河川も増水し、鹿児島県の万之瀬川や宮崎県の大淀川などで一時、氾濫(はんらん)危険水位を超えた。鹿児島県南さつま市大浦町の大王川では堤防が約20メートルにわたって決壊。住宅の浸水や人的被害は確認されていない。同県では鹿児島市などで住宅の全壊1棟、半壊2棟、一部破損5棟、床上・床下浸水27棟の被害が確認された。
同県の三反園訓知事は3日午後、自衛隊に災害派遣を要請。陸上自衛隊国分駐屯地(同県霧島市)から計約200人が鹿児島市と南さつま市に向かった。
交通機関も乱れ、日本航空は鹿児島発着の計9便を欠航し、4日も朝の計4便を欠航。九州新幹線は熊本―鹿児島中央間で3日午前中から運転を見合わせた。
梅雨前線上を低気圧が進む影響で4日も雨が強まり、同日午後6時までの24時間雨量は九州南部で300ミリ、九州北部で250ミリ、四国や近畿、東海で200ミリが見込まれる。
特に雨が強まる4日未明から早朝にかけて、気象庁は鹿児島県や熊本県に大雨特別警報を出す可能性があるとしている。同庁は「自らの命は自らが守らなければならない状況を認識し、早めの避難を」と呼びかけていた。