阪神・星野仙一オーナー付シニアディレクター(SD=58)が7日、阪神電鉄(本社・大阪市)の筆頭株主に躍り出た村上ファンドを率いる村上世彰氏(46)と都内で極秘会談を行った。複数の関係者が明らかにしたもの。村上ファンド側との協調も視野に入れる阪神側は星野SDを交渉の切り札として起用。連休明けの11日には阪神電鉄本社・西川恭爾社長(66)が村上氏と初のトップ会談を予定しており、星野SD出馬の成果が注目される。
星野氏と村上氏の会談は極秘裏に行われた。関係者の話を総合すると、7日夕、都内のホテルで約3時間会談した。
村上氏が要求していた西川社長との初のトップ会談は連休明けの11日と決まり、その下交渉として行われた。
阪神側は球団から球界全般まで通じる星野氏に切り札としての期待を抱いていた。4日から村上ファンドとの本格的協議に入った阪神側上層部は星野氏に本社の意向を伝え、交渉役を依頼。星野氏は阪神側を代表する形で村上氏に対した。
この日の星野氏-村上氏会談の焦点は阪神電鉄の100%子会社、タイガースをめぐる問題。村上ファンドはこれまで「タイガース球団株の上場」「大物経済人の球団社長起用」「選手に対するストックオプション(自社株購入権)制導入」など具体的な要求を提示。タイガース・ブランドに強い興味を示している。
阪神側は依然、球団株上場には抵抗を示すなど、対応策に頭を痛めていた。星野氏は「球団株上場に難色を示す球界の現状」「野球協約上の問題」「ファンの拒否反応」などを説明し、理解を求めたとみられる。
財界にも通じる星野氏には村上氏との接点も見いだせる。今回、村上ファンド側が球団社長候補に示した三井住友銀行前頭取、現特別顧問の西川善文氏(67)、日本銀行総裁・福井俊彦氏(70)はともに星野氏後援会「虎仙会」の一員。ある阪神首脳は「星野氏の人脈を踏まえたうえで、村上氏との交渉を設定した」と語り、交渉を軟着陸させたいとの意図が見える。
対決姿勢に見えた両者も6日にはそれぞれ協調路線を示すコメントを発表。阪神側は「対決姿勢のような報道がされているが、そのような事実はない」、村上ファンドも「対立・敵対の事実はない。友好的に協議を行っている」と文書で示した。村上ファンドが株主総会拒否権(3分の1超)を持つ38・13%の株を取得したことが表面化した3日には「憤りを感じる。タイガースは私的ではなく公共のもの。ファンも許さない」と怒りをあらわにした星野氏も6日以降は沈黙に転じていた。
交渉が順調に進めば、11日のトップ会談後には記者会見の準備もあると伝えられる。今回の極秘会談が今後の交渉にどのような影響を与えるか目が離せない。