【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)統計局が13日発表した2015年1~3月期のユーロ圏の域内総生産(GDP)は物価の影響を除いた実質で前期(14年10~12月)に比べ0.4%増えた。伸び率は前期から0.1ポイント拡大し、8四半期連続のプラス成長となった。年率換算の成長率は前期比1.6%で、11年1~3月期以来4年ぶりの高い伸びとなった。
セールの店頭で列を作る買い物客(1月、ローマ中心部)=ロイター
1月には欧州中央銀行(ECB)が量的緩和を決めるなど、ユーロ圏はデフレ懸念に苦しんだ。だが、GDPでみた景気の面では、原油安とユーロ安を追い風に緩やかな回復を維持した格好だ。
主要国の国別では、14年10~12月期がゼロ成長で停滞気味だったフランスとイタリアが回復してきた。実質GDPの前期比伸び率はフランスが0.6%、イタリアは0.3%で、ともに成長ペースが加速した。
一方、これまで域内主要国で「独り勝ち」の様相をみせていたドイツは0.3%増とプラス成長を維持したものの、0.7%増だった前期からは減速した。債務問題が長引くギリシャは0.2%減で、2期連続のマイナス成長に落ち込んだ。
ユーロ圏全体の回復をけん引したのは急速に進んだユーロ安と原油価格の下落だ。ECBによると、ユーロの実力を示す名目実効レートは3月、約13年ぶりの低水準に下がった。
1年前と比べ約13%の下落。ユーロ安が輸出企業の業績を押し上げ、雇用の改善や賃金上昇をもたらした。ドイツでは14年の実質賃金が前年比1.7%と08年の現行調査開始以来、最大の伸びを記録した。これが消費者の財布のひもを緩める要因になっているようだ。
原油価格は欧州の指標とされるブレント原油価格が1月に6年ぶりに1バレル=50ドルを一時割り込んだ。昨年夏以来、半年で6割近く下がり、ガソリン安などを通じて消費意欲を刺激した。1~3月期の新車販売台数は4.7%増と前期(2.2%増)から大きく加速。フランスの自動車大手ルノーは1~3月期の欧州での販売台数が前年同期に比べ1割近く増加した。