稀勢の里(左)は送り出しで豪栄道を破る=北村玲奈撮影
(16日、大相撲夏場所9日目)
どすこいタイムズ
口を真一文字に結んで稀勢の里は勝ち名乗りを受けた。2場所連続の初日からの9連勝。支度部屋で大勢の報道陣に囲まれ、「流れがよかった」との質問に「いいと思います」。「思い切って」の問いかけにも「うん」と答えたのみ。短い言葉に充実ぶりをにじませた。
1敗で追走していた豪栄道との大関対決。過去22勝13敗のライバルに立ち合いで突っ掛けた。精神面の弱さを指摘されてきたかつての稀勢の里ならば動揺したかもしれない。だが、ふてぶてしいまでの仏頂面は自信に満ちたままだった。
2度目の立ち合い。左を固めて豪栄道の得意とする右差しを封じた。左を差し、そのまま相手の上体を起こしながら前に出た。豪栄道は「(右手でまわしは)触れたくらい。胸が合った時点でダメ。完敗です」。土俵下に送り出され、脱帽するしかない。それほど強さが際立つ一番だった。
1敗の日馬富士も敗れ、全勝は白鵬と2人のみ。マッチレースの様相を呈してきた。藤島審判副部長(元大関武双山)は「稀勢の里は相手をよく見ている。今場所は特にそう感じる。ただ、これからだ」と話す。
大関在位27場所で、2桁勝利は19場所。安定感がある一方で、2014年初場所など綱とりがかかった場所では力を発揮出来なかった。初の賜杯(しはい)、そして綱とりへ。残り6日。今度こそチャンスをつかみたい。(鷹見正之)