水俣市立水俣病資料館を訪れ、語り部たちと言葉を交わす天皇、皇后両陛下=2013年10月27日
天皇陛下は今年5月、熊本地震の被災地を訪れた。その際「お世話をして下さってありがとうございます」などと言葉をかけられた益城町ボランティア連絡協議会長、吉村静代さん(66)は「引き際を大事にされたいのでは」と推し量った。「包み込むような優しさ」を感じたという吉村さん。「親として、皇太子さまに任せるようにしたいのではないでしょうか」
天皇陛下、生前退位の意向 皇后さま皇太子さまに伝える
特集:天皇陛下の歩み
昨年10月、天皇陛下は障害者の就労を支援する社会福祉法人「太陽の家」(大分県別府市)の創立50周年記念式典に出席した。職員の宿野部(しゅくのべ)拓海さん(24)は、生前退位の意向に「お元気な陛下が」と驚いた。
式典後、パラリンピック出場をめざす選手たちの練習を視察。両手足にまひがある宿野部さんら卓球選手の練習を見守るだけのはずだったが、飛び入りでラケットを手にした。「私にも真剣にラリーをしてくださった誠実な方。公務が大変ならば、ご無理はしないでほしい」と語った。
天皇陛下は2013年10月、熊本県水俣市の市立水俣病資料館で水俣病患者・家族10人と懇談した。「語り部の会」会長で患者の緒方正実さん(58)は「国民に戸惑いや不安を与えまいという思いやりを感じた」と話す。皇位継承がスムーズにいくよう願っているのではと考える。
天皇陛下の「思いやり」は3年前の懇談でも感じた。緒方さんの体験を聞いた後、陛下は「真実に生きるということができる社会をみんなで作っていきたいものだと改めて思いました」と、予定にない思いを語った。「今もあの言葉の意味を考えながら語り部の活動をしています」と緒方さんは話す。