5日の契約更改後に記者会見する大谷翔平
2017年オフ以降の大リーグ挑戦を認められた日本ハムの大谷翔平選手(22)に、思わぬ事態が持ち上がった。25歳になる19年オフより前に移籍すると、契約総額がこれまで想定されていた額の20分の1程度になってしまう可能性が出てきた。
ポスティングシステム(入札制度)を利用して移籍した場合、大谷は総額2億ドル(約228億円)以上の長期契約を勝ち取れると予想されていた。しかし先月30日、米国、カナダ、プエルトリコを除く25歳未満の海外選手を獲得する際、大リーグ球団が選手に支払える総額は1千万ドル(約11億4千万円)までに制限され、しかもマイナー契約となることが決まった。
大リーグ機構(MLB)と大リーグ選手会が合意した新労使協定による規定だ。25歳未満、プロリーグ所属6年未満の海外選手に支払える金額は475万~575万ドル(約5億4千万円~約6億6千万円)。1千万ドルまで上積みするには、トレードをフル活用する必要がある。
入札制度は日本野球機構(NPB)とMLBで協定を結んでいるため、日本選手は新しい労使協定の対象外になるとみられていた。しかし、5日に始まった大リーグ関係者が集まるウィンターミーティングで、大リーグ幹部が各球団の国際スカウト担当者に説明。その結果を受け、FOXスポーツなどが「大谷も特例扱いにはならない」と伝えている。
今回の規定が成立した背景には、近年目立つ若手キューバ選手との大型契約がある。さらに選手の間には、大リーグで実績のない外国籍選手への巨額投資をおもしろくないとする意見もあったという。
大谷はこれまで金銭への興味は一切示していない。ポスティングシステムを使っての大リーグ移籍が認められた5日の日本ハムとの契約交渉後は「自分の気持ちを優先させてもらえる、という形になった」と喜んでいた。1年目から大リーグ昇格は可能で、活躍すればその後に大型契約を手にできるかもしれない。ドラフト指名を経て入団した選手と同じ待遇からプレーした方が、周囲からより認められるという意見もある。
たとえもらえるお金は少なくても、1年でも早く大リーグ移籍の夢を実現するのか。それとも、好条件で契約できるまで日本でプレーするのか。日本ハムの栗山英樹監督は8日、「翔平にとって、お金は関係ないだろう。(大リーグ挑戦という)思いが本当にあるなら、今オフ、来季がいかに大事かということ」と話した。(遠田寛生)