新潟県糸魚川市役所で始まった被災証明の発行=25日午前、狩野浩平撮影
新潟県糸魚川(いといがわ)市で発生した大規模火災で25日、自宅を失った人たちの火災保険申請などに必要な被災証明書の発行が始まった。また、商店街の中には営業を再開する店もあり、少しずつだが、生活再建への動きも表れつつある。
糸魚川大火
糸魚川市役所では、午前9時半から被災証明書の発行が始まり、今後の暮らしについて市職員に相談したりしていた。市によると、この日は約100棟分の証明書が発行されたという。
避難勧告が24日にすべて解除されたことで、商店街にも人が戻りつつある。
同市本町の電器店「小林デンキ」は25日、営業を再開。専務の斎藤誠司さん(40)は「できるだけ早く日常に戻すことが大事。やれるならやろうと思った」。電池や電球が売れたほか、仮住まいが決まった人に中古の洗濯機やテレビを貸し出した。
冠婚葬祭用品を売る「京屋」では、見舞金を入れる袋をなじみの客が次々と買っていった。同店では、餅菓子の「御ゆべし」も作っている。350年の歴史がある土産物で、木嶋由紀さん(35)は「明日には作ります。多めに作った方がいいかな」と話した。
JR糸魚川駅近くの「駅前銀座商店街」は、火元のラーメン店の東側にあったが、風向きの関係で被害を免れた。商店街振興組合は、所有する空き店舗を休憩所として被災者に開放し、支援物資も配った。組合の加盟店の中には、トイレや携帯電話の充電器を貸し出す店もあるという。糸魚川商工会議所副会頭で、大町2丁目で呉服店を営む山岸美隆さん(62)は「この先100年を見据えた、2度と大火のない街づくりをしたい。現場からも声をあげたい」。
一方、まだ先のことを考えられない人や、店の再建をあきらめる人もいる。
本町の女性(69)は自宅が全焼。夫、息子、ペットの猫5匹と親戚宅に身を寄せる。焼けた自宅のがれきの中から、息子の小学校の運動会の写真数枚をなんとか見つけた。「ぼうぜん自失が続いている。今後のことは決まっていません」。精肉店「いろは」を営む高山順一さん(67)は廃業を決めた。11月に創業80年を迎えたばかりだった。「3代続いた店をこういう形でやめることになるとは」とため息をついた。
同市は25日、被害に遭った住宅などの数は144棟で、うち120棟が全焼だったと発表した。