練習試合の前に笑顔を見せる広島・堂林=上田幸一撮影
■スコアの余白
やけどの痕は、覚悟の刻印だ。「まだちょっと残っていますよ、この辺とか」。2月末日、広島の堂林が右目あたりを少し誇らしげに指さした。まだ皮膚がただれていた。
スコアの余白
1月11日、火柱の前で経を唱える護摩行の自主トレで負ったものだ。昨季セ・リーグの最優秀選手に輝いた新井に連れていってもらった。新井は「考え直した方がいい、と言ったのに、3回も頼みにきた。本気だな、と」と認めた。
かつては順風満帆な道のりを歩んでいた。愛知・中京大中京高で2009年に夏の甲子園で優勝。プロ3年目の12年には144試合で2割4分2厘、14本塁打とレギュラーをつかんだ。だが、その後の成績は下降し、チームが25年ぶりにリーグ制覇した昨季は47試合の出場にとどまった。「優勝を心の底からは喜べなかった」。自身に足りないものを探して、同じ右打者でベテランとなっても泥まみれで練習する新井に弟子入りした。
キャンプでは、対外試合で安打を積み重ねた。最終戦となった2月28日の韓国・サムスンとの練習試合では、右中間に初本塁打。「センター中心に逆らわずに打てている」。確かな手応えを感じていた。
「今までやってきたことを1年間続けていきたい。今まではブレブレだったので、ごちゃごちゃ考えずにやっていきたい」。鯉(こい)のプリンスはうまくなりたい、と焦がれている。(吉田純哉)