同率首位で並んだ中日との最終戦に勝って優勝し、胴上げされる巨人の長嶋茂雄監督。「10・8決戦」と呼ばれた=1994年10月8日、ナゴヤ球場
プロ野球の中日が20年ぶりにセ・リーグ制覇を決めた1974年の対大洋戦、同率首位で迎えたシーズン最終戦で巨人と死闘を繰り広げた94年の「10・8決戦」……。50年以上スポーツアナウンサーを続け、数々の名場面に立ち会った元東海テレビの吉村功さん(76)が、選手との秘話などを記した「アナウンサーは足で喋(しゃべ)る」(桜山社)を出版した。
東京・中野生まれ。子どものころから、野球の実況中継のまねをしていた。早稲田大学政治経済学部を卒業後、63年に東海テレビに入社。プロ野球を中心にボクシング、競馬、ゴルフ、マラソンなどを実況した。
巨人の江川卓投手がナゴヤ球場で8者連続三振を奪った84年のオールスター戦のほか、高橋尚子選手が日本記録を更新した98年の名古屋国際女子マラソンなどを担当した。88年に中日がセ・リーグの優勝を決めた試合で、マウンドに立つ抑えの郭源治投手の様子を「郭はもう泣いています!」と伝えた場面は、今もファンに語り継がれている。
思い入れのある実況の一つが94年10月8日、ナゴヤ球場の中日―巨人戦。中日が同率首位の巨人とシーズン最終戦でセ・リーグの頂点を争い、6―3で巨人が優勝を決めた「10・8決戦」だ。視聴率はプロ野球中継史上最高の48・8%(関東地区)。著書では254ページのうち40ページを割いた。
試合経過をたどりながら、その後の取材でわかった選手や監督の心理状態、作戦に秘められたエピソードなど、巨人の長嶋茂雄監督が「国民的行事」と呼んだ死闘を振り返った。
〈いつもの試合とは景色が違っ…