取材に応じるJR西日本元相談役の井手正敬氏=大阪市中央区、広島敦史撮影
107人が死亡、562人が負傷した2005年4月のJR宝塚線(福知山線)脱線事故で、当時JR西日本相談役だった井手正敬(まさたか)氏(82)が、業務上過失致死傷罪で強制起訴された裁判で今年6月に無罪が確定したのを機に、朝日新聞の取材に応じた。「裁判後のほうがより責任の重さを感じている。申し訳ない気持ちが深くなった」と述べる一方、事故の背景と指摘されてきた企業風土の問題は「絶対になかった」と振り返った。
「基本的に運転士が悪い」JR西元相談役の主なやりとり
企業風土の問題、残していないか JR西に問われる責任
【特集】JR宝塚線脱線事故
井手氏は、国鉄の分割・民営化で中心的な役割を果たし、1987年のJR西発足時に副社長、その後、社長、会長、相談役に就き、05年6月に退任。その間、私鉄王国と言われた関西で高速・大量輸送化を進めた。事故の遺族にとっては「加害企業」の象徴的な人物だ。
事故後は法廷以外にほぼ姿を見せず、弁護士を通じてコメントを出すほかは、事故についての取材にも、この10年ほど表立って応じてこなかった。
今回、井手氏は安全対策について、裁判での主張と同様に「安全投資はものすごくした」と説明した。裁判では、一定速度を超えるとブレーキがかかる自動列車停止装置(ATS)が現場に整備されていなかったことなどから、井手氏ら歴代社長3人が「利益重視の企業風土で安全対策が後手に回った」と責任を問われていた。
井手氏は事故原因について、「…