山中自身が「ベストバウト」に挙げたモレノ戦=2016年9月16日、細川卓撮影
世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級で、日本歴代2位となる12度連続防衛を達成した山中慎介(35)=帝拳=が26日、東京都内のホテルで引退会見を開いた。「神の左」と評された左パンチをもつボクサーが選んだ「ベストバウト(最高の試合)」は、再戦の末にアンセルモ・モレノ(パナマ)を下した11度目の防衛戦だ。
モレノは、2015年に戦って2―1という僅差(きんさ)の判定で下した。確実にポイントを稼ぐ相手に手を焼き、8回終了時に採点が公開された時点では、リードを許す展開。残り3ラウンドで打ち合い、優勢に立った。
その1年後、16年9月16日の再戦は違った。序盤からダウンを奪い合う激しい展開。最後は、左ストレートを効果的に浴びせた山中が、7回1分9秒のTKO勝ちで決めた。
この日は、過去に同じベルトを巻いていた長谷川穂積が3階級制覇を果たした日でもある。「応援してくれた皆さん、ファンのみなさんにも心に残っていると思うので、満足した試合でした」と山中は言う。
得意パンチは、ワンツーと左ストレート。どちらも基本的な技術だ。「歴代の世界チャンピオンの中でも、トップクラスの引き出しの少なさ。でも結果を残してこられたのは、高校時代から磨き上げてきたパンチを信頼していたから」。後輩たちに伝えたいことを尋ねられ「大事なのは、継続は力なり」と答えた。(井上翔太)