核兵器の恐ろしさを伝え続ける原爆ドーム(広島市中区)が被爆する前の「広島県物産陳列館」の完成予想図の原画が見つかった。設計者でチェコの建築家ヤン・レツル(1880~1925)が水彩で描いたもので、所有者から寄贈を受けた原爆ドーム近くの「おりづるタワー」が24日、一般公開を始めた。
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建物は1915年に完成。原画は横87センチ、縦53センチで、レツルが、県知事への説明資料として自身で用意したものという。建物が「広島県産業奨励館」に改称された後も、館内2階貴賓室に飾られていた。戦争の激化を受けて44年春、同館職員が別の場所に移していたため、原爆に遭わずに無傷で残った。
この職員の親戚が長く所蔵していたが、昨年、田中電機工業(広島市南区)の田中秀和会長(68)が画廊を通じて入手。「平和発信に貢献したい」とおりづるタワーへの寄贈を決めた。この日の式典で田中さんは「在りし日の原爆ドームに思いをはせてほしい」と話した。(宮崎園子)