小さな公園から、夢の甲子園へ――。北福岡代表になった折尾愛真(北九州八幡西区)は創部15年目。最初の頃、近所の公園で練習していた先輩たちは「甲子園でものびのびと楽しみ、打ち勝ってほしい」とエールを送る。
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学校から約1キロ離れた中須公園のグラウンドで28日、内山綾香さん(30)と川端亮介さん(29)が、懐かしそうに話していた。
2003年に女子高から男女共学となった折尾愛真。翌年4月に硬式野球部ができ、内山さんら男女5人が入った。学校のグラウンドは他の部が使っていたため、空いた場所で素振りや走り込みを行ったが、バッティングやキャッチボールはできなかった。
奥野博之監督はグラウンド探しに奔走した。5月に入り、少年野球チームが練習する程度の小さな中須公園を使えることになった。川端さんは全くの初心者。内山さんは小2から野球をやっており、練習を見た小学生から「あのお姉ちゃんが一番うまいね」と言われた。
その後、野球部は力をつけ、06年からは福岡県遠賀町の両翼が100メートル近いグラウンドを使っている。部員も47人に増えた。
北福岡大会の決勝当日。チームは中須公園に立ち寄ってから球場へ向かった。奥野監督は「『ここまで来られたのは、ここで練習を始めたあの5人がいたからだ』と伝えたかった」と言う。
決勝は13安打3本塁打と打ち勝った。1期生の主将、麻生浩司さん(29)は、楽しそうにバットを振る選手たちが誇らしかった。当初から「打つことの楽しさ」を説いていた奥野監督を思い出し、「ようやくやりたかった野球ができている」と感じた。
奥野監督は「あの頃は、すべてが初めてで苦しかった。狭い場所で思いっきりやらせてあげられなかった。だからこそ、甲子園で打ち勝つ姿を見せてやりたい」。選手たちは30日午後、兵庫県へと出発する。(狩野浩平)