(10日、高校野球福岡大会 香椎9―5香椎工)
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八回裏2死三塁、香椎工のエース木全(きまた)響君(3年)はマウンド上でにっこり笑った。痛烈な適時三塁打を浴びて、5点差に広げられた。なのに負ける気が全然しなかった。「勘違いかな。それでもいいや」。次の打者に対して選んだ勝負球は、得意のツーシーム。狙い通り詰まらせて左飛に打ち取ると、大きく息を吐き、笑顔でナインを振り返った。
身長170センチ。小1で野球を始め、小5から投手だったが、「この体格では高校で通用しないかも」と、野球部に入るのをためらった。それでも野球を続けられたのは「やっぱり野球が一番好きだった」。直球では力負けするからと、制球力と変化球、特にツーシームでバットの芯を外す投球に磨きをかけてきた。
今季練習試合で一度も勝てなかった香椎を相手に、こだわってきた変化球が狙ったコースに決まった。後半はピンチの連続だったが、不思議なくらい最後までマウンドが楽しかった。
九回の投球機会はなかったが、納得の一球を投げられた。「完全燃焼できた。野球はこれでやめるつもりです」。試合後、真っ赤な目で笑った。(上遠野郷)