夏の全国高校野球選手権福岡大会で、高校生が球審としてデビューした。
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九産大九産の黒岩龍之介君(1年)。試合後、「緊張しました」と言いながらも、爽快なまでの表情を見せた。
「さあ、頑張っていこう!」
15日、福岡県小郡市野球場の第2試合、早良―福岡舞鶴戦で、黒岩球審のやや高い声が響いた。
幼稚園のころからキャッチボールを始め、中学では地元の硬式野球チームに入った。しかし、中学2年の秋、左足首を骨折。全力でプレーができなくなった。何とか野球に関わり続けたい、思いついたのが審判だった。
「グラウンドで野球ができるのは選手以外では審判だけ」
全日本軟式野球県連盟に電話をかけ、審判になる方法を尋ねた。その後も努力を重ね、球場に通っては、試合をジャッジする先輩審判の動きを丹念に追った。
昨年は少年野球や軟式野球の試合を中心に124試合をこなした。
「一定の基準に達した」と評価され、今春、九州地区高校野球福岡県大会で塁審としてデビューした。
もしあのときのけががなかったら――。そんな気持ちがわき起こることもあるが、「今は審判に引かれている」ときっぱり。「選手に負けないようにしなければという気持ちで、毎試合立っている」と語る。
県高校野球連盟の和佐野一文審判長(68)は「全体的に落ち着いていた」と評価した。
福岡舞鶴の三苫(みとま)駿太捕手(2年)は試合後、審判の印象を「よく声をかけてくれた」と話したが、高校生だと聞くと「マジっすか。若いなとは思っていましたけど……」と驚いた様子だった。
審判は公平性を保つ観点から、どの試合を担当するのか、当日にならないと本人にも通知されない。今大会でも今後、審判として球場に立つ可能性がある。「培った技術を生かし、高校野球という舞台に貢献したいです」と意気込んでいた。(棚橋咲月)