(9日、高校野球福岡大会 筑陽学園9―2福岡工)
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福岡工には、上学年から親、子、孫に見立てる「家族」制度がある。5月、各学年ごとにくじを引き、同じ番号が家族となる。
3年生に交じって試合に出る下級生が重圧を感じないように、スポーツの部活動特有の上下関係を取っ払うために下見世宏樹監督が採り入れている。
親が子を見守るように、同校では上級生が下級生を支えている。そしてクセまでつかむ。たとえばこの日の一回表1死一、三塁。緊張して体が固まる「子」の栗原巧君(2年)が打席に立つと、「親」の柴田大夢君(3年)がベンチから「クリポン、がんばれ~」とリラックスさせる。栗原君はすくい上げるように打って左方向への犠飛となり、三塁走者が生還した。
普段の会話も密だ。外野を守る柴田君と栗原君は、強力打線の筑陽学園に対し、「振ってくる。深く守ろう」と戦略を練っていた。柴田君が四回に代打で出て、その裏から左翼の守備につくと、中堅の栗原君と打球の方向を見極め、守備位置を確認していた。
六回でベンチに下がった柴田君が八回裏に伝令に向かい、仲間を勇気づけた姿を、栗原君はじっと見ていた。そして試合後、体をくの字に曲げて泣く柴田君に誓った。
「教えられたことを糧に、次の夏は勝ちたい」(棚橋咲月)