厚い雲に覆われた梅雨空の下、福岡大会5日目の10日は2回戦13試合があった。昨夏の南福岡大会決勝と同一カードとなった1戦は九産大九州が沖学園にコールド勝ちし、雪辱を果たした。息をのむシーソーゲームとなった福岡西陵と久留米学園の試合は延長十回に1点ずつ取り合ったところで雨が強まり、水入りに。引き分け再試合は11日、小郡市野球場の第3試合に予定されている。
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後輩がつないだ最終打席 唯一の3年生 玄界・日野颯馬主将
7点を追う七回表2死満塁。玄界の主将を務める日野颯馬(そうま)君(3年)は初球のストレートを振り抜いた。打球の行方を追いながら一塁へ走った。高く上がったボールは中堅手のグラブに収まった。
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玄界の3年生は日野君だけ。入部当初からそうだ。最上級生となり、主将として2年生18人、1年生16人を引っ張ってきた。
だが、最後の夏にかける日野君の緊張感は、下級生に伝わらず、「集合」と声をかけてもダラダラ歩きながら集まってくる。いらだちが募るばかりだった。
どうしたら後輩のやる気スイッチが入るのか――。日野君が出した答えは、行動で示すことだった。筋トレが始まり、談笑する後輩がいても、日野君は黙々と取り組んだ。その姿に刺激され、1人、2人と熱意を見せてきた。
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そして、この日の七回表、後輩たちが日野君の最後の夏を演出した。
0―9で迎えた七回表。3点を取らなければコールド負けになる。三塁打で1点を返すと、さらに内野安打で1点を奪い、2死一、二塁。3番の2年生に打順が回った。4番には日野君が控えている。ベンチはいっそうにぎやかになった。
「日野さんに回せっ」
その期待に応え、中前打。日野君につないだ。2死満塁。ベンチは最高潮に達した。しかし、最後の打者となった。
「いいところを見せられず、行動で示せなくて悔しい」。日野君は言葉少なだった。だが、たった1人の3年生につなぐ気持ちが生んだ展開は、夏の思い出になったはずだ。(布田一樹)