(30日、高校野球北大阪大会決勝 大阪桐蔭23-2大阪学院大)
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夏の甲子園、歴代最高の試合は? 投票ベストゲーム
九回表、最後のアウトをとって優勝が決まった瞬間、一塁からマウンドに駆け寄った大阪桐蔭主将の中川卓也君(3年)の胸にこみ上げたのは、安堵(あんど)よりも「ここからが勝負だな」という思いだった。「ずっと甲子園の春夏連覇を目指してきた。やっとスタートラインに立てた」
絶対に負けられない決勝の舞台で、初回から相手を圧倒し続けた。大阪学院大は初の決勝進出で、「経験したことのない雰囲気に浮足立つはず」と読んでいた。一回表、二塁に進まれながら無失点で切り抜けると、直後の攻撃で1、2番がわずか3球で1点を先取。続く中川君も安打を放ち、この回に4点を挙げて流れをつかんだ。
六回には2死から12安打。畳み掛けるような攻撃で13得点を挙げた。大量リードの展開にも、「夏の大会にセーフティーリードはない。どんどん取ろうと言い合った」と最後まで緩まなかった。
「日本一になるために何をすべきか」を考え続けてきた。
今春の近畿大会府予選で、チームは1試合ごとにテーマを設定して戦った。「一瞬も隙を見せない」「粘り強く戦う」「意地と執念」――。決勝では「圧倒して勝つ『圧勝』」を掲げ、言葉通り、好投手を擁する関大北陽を9―0でねじ伏せた。
そして迎えた今夏の北大阪大会。中川君は「もう試合ごとのテーマはない。夏は勝てば100点、負ければ0点なので」。これまでの集大成として、徹底的に勝ちにこだわった。
準決勝では、最大のライバル履正社を相手に九回2死走者なしから逆転する劇的勝利を収めても、チームに油断はなかった。「ここで甲子園に行けると思ったら足をすくわれる」。主将としてチームに一瞬の隙も許さず、優勝まで導いた。
夏の甲子園には去年、大きな忘れ物をしてきた。
春夏連覇に挑みながら、3回戦で自身のエラーが絡んで九回に逆転サヨナラ負けした。「あの悔しさから始まったチーム。今度こそ、という思いは強い」。あの借りを返しに。そして、去年は逃した、史上初となる2度目の春夏連覇を成し遂げるために。100回大会の甲子園へ、深紅の大優勝旗を取りにいく。(遠藤隆史)