第100回全国高校野球選手権記念大会の9日の第1試合で、愛産大三河(東愛知)は横浜(南神奈川)で0―7で敗れたが、22年ぶり2回目の甲子園出場に、三塁側アルプス席からは大声援が響いた。生徒らはこの日のために、初出場時の「応援カンペ」を参考に選手一人ひとりの応援歌を作り、息の合った応援を見せた。
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「家康公の意志受けて日本を取るぞ三河高♪」。スタンドに同校に代々伝わる応援歌が流れた。応援に駆けつけた22年前の主将、神谷裕昌さん(40)は「選手時代のことを思い出しました」と懐かしんだ。
22年前のカンペは、愛産大三河が東愛知大会優勝を決めた直後の7月27日午後、教員会議で存在が明らかにされた。「生徒会室の棚に22年前のカンペがある」と当時応援に加わっていた教諭が指摘。言葉通り、カンペが見つかった。
カンペには、応援の細かい指示や選手ごとの応援歌の歌詞が記されていた。「今回も同じものを作り、生徒に呼びかけられないか」と、生徒会が野球部にカンペ制作を頼んだ。
22年前はプロ野球・中日の選手の応援歌などが使われていたが、現在は「盛り上がれる曲が多い」としてロッテの応援歌やポップスを多用するなど当時と異なる点も多い。そこで、太鼓係の中本大晴君(3年)ら同級生4人を中心に、約5時間かけて現在の応援を手書きで紙に書き起こした。生徒会担当の八木晴美教諭(24)はその紙を受け取り、パソコンで文書にまとめ、全校生徒約1200人分印刷した。
8月1日、選手らの壮行会が体育館で行われた後、カンペが生徒や教諭に配られ、学校に残った応援団長の石井佑弥君(3年)ら野球部39人が、全校生徒を指揮して応援練習をした。八木教諭は「歌詞もわかり、野球部の皆が歌ってくれて、生徒もわかりやすかったようでした」。練習の声は、体育館の外でも大きく聞こえた。
壮行会後には、放送部の力を借りて、応援方法の動画も撮影。この動画は学校のネットワーク上にアップロードされ、8日深夜に生徒を乗せて同校を出発したバス内でも流された。
この日の試合は、強豪相手に完封負けを喫したが、松原絃介主将(3年)は「すごく良い応援だった。感謝の気持ちしかないです」と話した。(江向彩也夏、申知仁)