第100回全国高校野球選手権記念大会(日本高校野球連盟、朝日新聞社主催、毎日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)で西東京代表の日大三は10日、北福岡代表の折尾愛真に16―3と大勝して初戦突破し、2回戦へ進んだ。初回に先行されたが直後に7点を返すなど強打を発揮し、15安打を浴びせて一方的な展開とした。日大三の夏の甲子園での勝利は、2度目の全国制覇を果たした2011年以来7年ぶり。次戦は第11日(15日)の第3試合(午後1時開始予定)で、夏の甲子園初出場の奈良大付と対戦する。
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勝ち越し打に思わず笑み
押し出しの四球で追いついた一回。なおも1死満塁の好機に佐藤コビィ(3年)が打席へ。直前に遊撃手が三塁側に寄るのが見えた。「中堅へ狙えば、ヒットになる」。4球目の低めの変化球をたたくと、打球は狙い通り中前へ。2人が生還し、勝ち越した。ベンチで小倉全由監督が拍手をするのを見て、思わず笑みがこぼれた。
佐藤コの父はガーナ出身。入学当初から身体能力の高さを小倉監督は注目していた。昨夏に新チームが発足すると、小倉監督が朝の自主練習に付き合ってくれた。トスバッティングに付き合ってくれたり、打撃投手を務めてくれたりした。朝早い日は午前6時から。そんな小倉監督の姿に、佐藤コは「監督に恩返ししたい」と考えるようになった。
思いとは裏腹に、結果が残せなかった。「打たなきゃという思いが強すぎた」と振り返る。今春の選抜大会では、18人のベンチ入りメンバーに入るも、2試合とも不出場。気持ちが折れそうになったが、「練習しなければ結果は出ない」と奮い立たせた。ただバットを振るのではなく、一振り一振り狙い球を決めて、素振りを重ねた。努力の成果が出たのは、5月の関東大会。準決勝では公式戦初本塁打を放ち、自信をつけた。
関西入り後、小倉監督から「甲子園に来ることができたんだから思い切りやるだけだ」と声を掛けられた。練習や夕食後の素振りの時間にもアドバイスを受け、「初球から振っていけ」と言われ続けた。
この日は相手の左腕投手対策として先発出場。三回には1死二、三塁の好機に左犠飛を放ち、貴重な追加点を挙げた。途中で代打が送られたが、その後は一塁コーチボックスに入り、チームを支えた。
試合後、小倉監督は「打ってくれて良かった」とたたえた。佐藤コは「監督に少しは恩返しできたかな」と笑顔。一回の守備で無死一塁からの一ゴロを二塁に送球せずに併殺を逃したり、相手が右投手に代わった五回の打席で空振り三振に倒れたりした。「次戦への課題だらけです」と気を引き締めた。(滝口信之)