台風21号で冠水した関西空港は7日、被害が軽かった2期島で国内線の運航が始まった。新潟や那覇などに向けて出発便が飛び立つ一方で、福岡や成田などからの便も次々と着陸。乗客からは安堵(あんど)の声が聞かれた。
台湾から家族4人で日本を訪れていた大学生チェン・ティンユさん(21)は午後3時45分出発の那覇行きの便に搭乗した。
4日の来日直後、8日の関空からの帰国便が欠航になり、大阪や京都を観光する合間に、唯一空席があった7日夜の那覇発台北行きを自ら予約したが、大阪から那覇への便が軒並み満席だったという。諦めきれずに関空まで直接来たところ、那覇行きを予約できた。「便をとるまでは不安でいっぱいだったけど、帰れることになって本当に良かった」
横浜市の大学3年、橋本楓(かえで)さん(21)は神戸市の実家に帰省するため、午後3時ごろに羽田から到着。人がまばらな第2ターミナルを見て、「いつもは搭乗を待つ人でいっぱいなのに」と驚いた。11月に関空から台湾旅行に行く予定といい、「その時は空港にいつもの活気が戻っているとうれしい」と語った。
福岡から到着した福岡市中央区の主婦の女性(50)は神戸市在住の幼なじみと会う予定で、数カ月前から関空行きの便を予約。ニュースで台風の影響を見て、払い戻して新幹線で行こうかと考えていたというが、昨晩になって運航する旨のメールが届いた。「楽しみにしていたので無事に飛んでくれて本当によかった。神戸への高速船も出ていて安心しました」と胸をなで下ろしていた。
地震に見舞われたばかりの北海道の釧路からも乗客が降り立った。
北海道厚岸(あっけし)町出身で、大阪府富田林市の会社員の男性(33)は大学時代の友人一家3人と北海道を旅行で訪れていた。地震があった6日未明は4人で厚岸町の実家に滞在中。停電の影響で酪農業を営む両親が搾乳した牛乳を破棄せざるを得なかったという。インターネットが不通の中、6日夜にようやく搭乗予定の便が飛ぶことを確認でき、空港へ向かった。「ひとまず大阪に帰って来られてよかった」と話した。
大阪市旭区の塗装会社員猪尾(いお)丈二さん(36)は出張で北海道足寄(あしょろ)町に滞在していた。地元の祭りでみこしをかつぐため、7日に新千歳空港から関空に帰る予定だったが地震の影響で欠航に。釧路から関空行きの便が運航すると知り、信号が消えたままの道を足寄から約70キロ走って向かった。「無理かと思ったけれどギリギリ間に合って帰って来られた」と笑顔で話した。
江戸川大社会学部教授の崎本(さきもと)武志さん(51)は専門の観光学の現地視察のため、北海道弟子屈(てしかが)町を訪れていた。大阪での実地研修に参加するために関空行きを予約していたが、「飛ぶのかどうか今日まで不安だった」と振り返る。
「関空が急ピッチで再開してくれて本当に助かった。観光面でも、関空再開の影響はとてつもなく大きい」と語った。(坂東慎一郎)