(29日、選抜高校野球 龍谷大平安9―1盛岡大付)
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打者はしぶとく粘って、塁に出れば足を使ってかき回す――。らしさが十分に詰まった白星が、龍谷大平安を長く指導する原田英彦監督(58)の甲子園通算30勝目となった。
「よく打って、よく動いてくれた」。試合後のインタビュー台で監督は選手たちをそう褒めた。
盛岡大付の先発は「まったく予想しておらず、映像も見てなかった」という木内。面食らった部分もあったが、選手たちはたくましかった。一回に押し出しで先制すると、なお1死満塁で三尾がファウルで粘って10球目を左前への2点適時打とした。
「三尾はいつも、低めのボール球を振って崩れるのに。今、彼は乗っている」と監督。六回は采配に選手がこたえた。重盗を含む3盗塁を絡め、3点を追加。きれいな安打は少なくても、選手たちは崩されながらも球に食らいつき、終盤も着実に加点した。
試合前、監督は心配していた。「全然元気がない。もっと盛り上げないかん」。トレーナーが選手たちに「体調の悪いやつはおるか」「どこか痛いやつはおるか」と問いかけたとき、監督はすべての質問に「はい」と手を挙げて笑いを取った。
「誰よりも平安を愛しているのは僕自身」と公言する。監督として初勝利を挙げた1997年春から、もう20年以上がたつ。97年夏の準優勝、2014年春の優勝と古豪を復活させ、積み上げてきた30勝。「長くやらせていただいたおかげ」と謙遜しながらも、「区切りなのでうれしいです」と笑った。
若い頃は鼻っ柱の強い選手たちと文字通り「体当たり」で向き合ってきたが、近年は年齢の離れた選手たちの指導を「子育て」とも表現する。良くも悪くも「良い子」「おとなしい子」が増え、この日のように、監督自身がチームの盛り上げ役を務めなければいけないこともしばしば。
監督が待っているのは、主将水谷の復活だ。「3月くらいから、あいつの調子が上がらなくて。水谷が考え込むと、チームが盛り上がらないんですわ」
どこか、現代っ子らしからぬ武骨さを漂わせる主将はこの日1安打。「まだまだ。50%です」という柱が復調してチームを鼓舞できれば、監督の「31勝目」も近づいてくる。(山口史朗)