「粛々と進める」「上から目線だ」。米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、5日開かれた菅義偉官房長官と翁長雄志知事の初会談で、互いの主張は真っ向から対立した。一方、会談が行われた那覇市のホテル周辺には反対派の市民が集まり、「私たちの声を真剣に聴け」と訴えた。
目を合わせたが笑みはなく、握手から始まった菅氏と翁長氏の会談。那覇市のホテルの一室で、先に切り出したのは菅氏だった。翁長氏をまっすぐ見据え「移設断念は普天間の固定化につながる」。用意した紙に時折目を落としながら、公開された会談冒頭では、大半の時間を辺野古移設問題に割いた。
菅氏は政府が取り組む基地負担軽減策や沖縄振興策も次々と紹介し、安倍政権の沖縄に対する実績をアピール。「政権として約束したことは必ずやる」と断言した。
菅氏の言葉にうなずいていた翁長氏は、自身の番になると普段より早口に。菅氏が口にした「粛々と進める」という従来の主張に、前のめりになって「上から目線の言葉を使えば使うほど、県民の心は離れ、怒りは増幅していく」と反発した。
「国民を洗脳するかのようだ」。会談冒頭で菅氏が繰り返した「(普天間の)危険除去」という言葉にも強い表現で応酬。自身が約10万票差で圧勝した昨年の知事選に関しては、前知事による辺野古埋め立て承認の是非が「ただ一つの争点だった」と強調した。
両氏の会談が始まる前の午前9時ごろ、ホテル周辺には野党の国会議員や県議、市民ら約300人が集結。翁長氏を乗せた車が目の前を通ると「頑張れ」と声がかかり、翁長氏も車の窓を開け、手を上げて応じた。
会談終了後の午前11時ごろ、菅氏を乗せた車がホテルを後にする際は「沖縄の民意を聴け」「移設作業をやめろ」との怒りの声が響いた。
沖縄市から抗議に参加した玉那覇トミ子さん(79)は、昨年の知事選や名護市長選で移設反対派が勝利したと強調。「民意は明らかなのに、菅さんは理解していないふりをしているようだ。県民の感情を逆なでしている」と頬を紅潮させた。
これに対して、移設先とされる名護市の元市長、島袋吉和氏は「政府が進める辺野古移設は、市街地にある普天間基地の危険性の除去が目的だ。翁長知事がかたくなに反対していたら普天間の危険除去は前に進まない」と県の対応を批判した。〔共同〕