記者会見する名張毒ブドウ酒事件の弁護団の鈴木泉団長(中)=名古屋市中区
三重県名張市で1961年、女性5人が死亡した名張毒ブドウ酒事件で、第10次再審請求中の奥西勝元死刑囚の弁護団が18日、ブドウ酒の王冠に封をしていた紙(封緘紙〈ふうかんし〉)を科学分析した鑑定書など、計9点の新証拠を名古屋高裁に提出した。製造時に使われたのりとは異なる成分が検出されたとして、「真犯人が一度開けて元通りにした『偽装工作』を推認させる、重大な証拠だ」と訴えている。
奥西元死刑囚は昨年10月、医療刑務所で89歳で死亡。妹の岡美代子さん(86)が訴訟を引き継いだ。確定判決は、事件現場となった公民館の「囲炉裏の間」で毒物が混入され、奥西元死刑囚の犯行とした。
これまでの再審請求で弁護団は、封緘紙の、のりが付着した部分の経年変化などを根拠に、「真犯人が瓶を開けて農薬を入れて栓をし、その後、封緘紙を貼った可能性が高い」と主張。実物の鑑定を求めてきた。
高裁は昨年12月末、封緘紙の閲覧を許可。今年1月、弁護団が特殊な赤外線測定機器を高裁に持ち込み、大学の専門家が鑑定した結果、ブドウ酒製造時に使われたのり以外に、一般家庭で当時、普及していたのりに含まれる化学成分「ポリビニルアルコール」が検出されたという。
弁護団は18日の会見で、「検出成分は化学的に作られたもので、偶然に食品などが付着した可能性は低い」としている。ほかに毒物に関する新証拠も提出し、速やかな審理開始を高裁に求めた。