本塁打と打点の2冠を獲得し、ナ・リーグMVPに輝いたマーリンズのスタントン=AP
大リーグの移籍市場が停滞している。11月2日に今季のフリーエージェント(FA)149選手が発表されてから、約1カ月。まだ大物選手に動きはない。
原因はオフシーズンの特徴にある。大リーグでは、目玉選手の契約がまとまると市場が活性化し、2番手、3番手と一気に動く傾向が強い。注目選手の契約内容、移籍先によってその年の相場や流れが固まる。
今オフで言えば、その存在は2人いる。まずは、投手兼野手として計算され、日本時間2日にポスティングシステムの申請を行う見通しにある日本ハムの大谷翔平選手(23)。そして、もう1人が、今季ナ・リーグMVPに輝いたマーリンズのジャンカルロ・スタントン選手(28)だ。
豪快に振り下ろすスイングで、ピンポン球のようにボールを飛ばす打撃が売りのスタントンは、メジャー8年目の今季、自己最多59本塁打、132打点でリーグ2冠に輝いた。60本の大台には届かなかったが、年間59本塁打は2001年以来の最多で、73本を打ったバリー・ボンズ(ジャイアンツ)や、60本のベーブ・ルース(ヤンキース)ら過去に5人しか達成していない記録。初のMVP受賞に、「浮き沈みのある野球人生だった。支えてくれた人たちに感謝したい」と喜びを表した。
そんな強打者は現在、岐路に立たされている。マーリンズは、今オフから元ヤンキースのジーター氏がCEO(最高経営責任者)を務めるなど、新しいオーナー体制になった。新体制が掲げるのが、若返りと予算削減で、年数をかけて常勝軍団を目指す。そこで、来季年俸2500万ドル(約27億7500万円)を含む10年2億9500万ドル(約327億円)の契約を残すスタントンは抱えられない、と放出する方針を固めた。
米メディアなどによると、すでにカージナルスとジャイアンツが交換トレード案を提示したという。だが、巨額の契約だけに交渉は簡単ではない。それに、スタントンの契約には、全球団に対するトレード拒否権が含まれる。本人が同意しなければ残留となる。
ただし、スタントンはこれまでもずっと「優勝したい。そういう環境に身を置きたい」と発言してきた。関係者のなかでは、優勝よりも育成を優先するマーリンズから離れる公算が大きい。すでに、生まれ故郷に近いロサンゼルスが本拠のドジャースを希望しているという話や、30日にはジャイアンツがスタントンの代理人らと接触したという報道も出ている。
今季MVPは来季、一体どこのユニホームを着ているのか。球界は彼の決断をいまかと待っている。(遠田寛生)