台風接近から一夜明けて被害がさらに明らかになってきた。
台風接近どうする? 備え確認し、早めに避難を
水害への備えは? 台風に襲われたら、街で身を守る
5日午前8時45分ごろ、京都市左京区上高野東山で、「家が崩れている。中に父親がいるかもしれない」と、近くの駐在所に別居の長男(53)から連絡があった。木造2階建ての住宅の裏山が崩れ、1階に大量の土砂が流入。倒木が家を押しつぶしていた。同日午後1時前、消防隊員が屋内にいる住人男性(86)を発見し、救出活動を続けている。男性は意識があり、会話ができる状態という。
京都市左京区の野外活動施設「花背(はなせ)山の家」では、宿泊していた市立上里小(同市西京区)と市立大宅小(同市山科区)の5年生約160人が、道路が倒木で寸断されて動けなくなっている。停電も続き、自家発電で対応している。発熱などの症状がある児童2人が5日朝、消防のヘリで病院に運ばれた。市教委の担当者は「学校と市教委が相談し、屋内にいれば安全だと判断していたが、台風時の宿泊が妥当だったか検証したい」と話す。
大阪湾の湾岸部の大阪府咲洲(さきしま)庁舎(大阪市住之江区)近くの駐車場では強風で横転した車が5日朝もそのままになっていた。
「10メートルは飛ばされたのではないか。最初に車を見たときは、何も考えられなくなった」。近くの会社に勤める向井公平さん(53)は嘆いた。レッカー移動の手配はしたが、作業開始のめどは立っていないという。
兵庫県西宮市西宮浜2丁目では、潮の流入を防ぐために設けられた防潮門扉が波に押し破られ、クルーザーなど数隻の小型船が陸側に流された。県尼崎港管理事務所によると、防潮門扉は台風接近に備えて3日夕方に閉鎖していた。通常の高潮で破損することは考えにくいといい、「台風シーズンはまだ続くので早急に対策を取りたい」という。
文化財の被害も相次いだ。滋賀県彦根市の彦根城では国宝天守の2層目の外壁の漆喰(しっくい)が南面で幅2・5メートル、高さ3メートル、東面で幅2メートル、高さ3メートルにわたってはがれ、多聞櫓(たもんやぐら)と玄関の漆喰もはがれた。天守への山道は倒木でふさがれ、復旧作業が終了するまで彦根城博物館と合わせて閉鎖する。
世界遺産の仁和寺(京都市右京区)では、国宝の金堂と、いずれも重要文化財の御影堂と二王門が破損した。二条城(同市中京区)では国宝の二の丸御殿の瓦が落下し、飾り金具が脱落。国の重要文化財の土蔵も損傷した。城内は倒木が多く5日は休みとなった。
観月の地として名高い大覚寺(同右京区)では、重要文化財の宸殿(しんでん)の柱が破損。拝観中止になった。東京都西東京市から観光に来たパートの猪貝(いのかい)奈緒美さん(43)は「京都旅行の目当てがここだったので残念。風の被害がすごかったと実感した」と話した。
京都府宇治市の観光スポットである宇治神社でも、鳥居が倒れた。
交通の乱れは5日も続いた。JR神戸線は始発から運行を再開したが、午前5時半ごろ、架線に飛来物が付着しているのが見つかり、正午現在で直通する京都線を含めた高槻―姫路間で運転を見合わせている。おおさか東線の放出―久宝寺、阪和線の日根野―和歌山間も始発から取りやめている。南海電鉄は5日始発から全線で運行を見合わせたが、正午過ぎに高野線の一部と鋼索線、空港線を除いて再開した。4日に火災があった南海本線の尾崎駅(大阪府阪南市)は復旧の見通しが立っていない。
空の便は、関西空港は発着する便がすべて欠航。機材繰りの関係で5日も乱れが続いた。全日空と日本航空によると、国内線計88便、国際線計30便が欠航し、約1万6千人に影響が出た。