台風21号で甚大な被害を受けた関西空港が7日、国内線の運航を再開した。8日には国際線も再開されるが発着便数はまだ少ない。最大のアクセスである鉄道の復旧は来月以降になる見込みで、国際空港の機能を取り戻す道のりは険しい。
関空第2ターミナル(T2)には7日、国内各地からの便が次々と到着した。
和歌山市の会社員小林広美さん(23)は母親(52)との韓国旅行の帰りに関空便が欠航に。予定を延ばし、福岡空港を経てようやく関空にたどり着いた。「家や車の台風被害が心配で早く帰りたかったので、運良く乗れてよかった」
「1日、1時間ごとに状況は改善している」。7日午前、関西エアポートの山谷佳之(やまやよしゆき)社長はこう語り、被災3日後の運航再開に安堵(あんど)の表情を見せた。
被害が軽かった第2滑走路とT2を使い、7日に離着陸したのはピーチ・アビエーションと日本航空の計19便。通常の1割強だ。国際線を含め、普段は1日8万人超が利用しているが、7日の利用者は1千人を超す程度だった。
8日に国際線の運航も再開されるが、飛ぶのは韓国や香港などと結ぶピーチの12便と全日空の上海往復の2便だけ。今夏の1日平均350便超にはほど遠い。
就航航空会社の大半が使う第1ターミナルは電気施設が浸水し、停電が続く。関西エアは停電していない南側のエリアを中心に1週間以内の営業再開を目指している。冠水した第1滑走路も同時に暫定運用を始めたいというが、どれだけの便数が発着できるかは見通せない。
さらに大きな課題はタンカーの衝突で損傷した連絡橋だ。道路と線路が走っているが、道路の南側車線の橋桁が約4メートルずれ、道路より低い位置にある北隣のJR西日本・南海電鉄の共用線路の橋桁も約50センチずれた。西日本高速道路などによると、2週間で線路に覆いかぶさった道路の橋桁の撤去を終えたい考えで、その後、線路の橋桁をジャッキで持ち上げてずれを解消。線路の修復に取りかかる予定という。
西日本高速道路は7日からバスなどに限り、北側車線で対面通行できるようにした。これを受け、関西エアは対岸の大阪府泉佐野市との連絡バスを運行。関西各地と結ぶリムジンバスも路線や本数を絞って運行を再開した。
ただ、関空の利用客のほぼ半数が使う鉄道の復旧は「おおむね4週間後」(国土交通省)。南側車線の橋桁の完全復旧はさらに遅れる見通しだ。航空機の運航が再開できても利用客をさばききれない恐れがあり、関西エアの山谷社長は「ボトルネックになるかも」と不安を口にした。