東日本大震災で、防潮堤を越えた津波により大きな被害が出た岩手県宮古市の田老地区で22日、宅地造成や災害公営住宅の完成を記念する「まちびらき」の式典が開かれた。かさ上げした従来の市街地と、新たに造成した高台の2地域で計約45ヘクタール、約450戸分の宅地が整備され、津波防災の町として再出発を期す。
式典は市関係者や住民ら約300人が参加。田老第一中3年の西川竜斗君(15)は、生徒らが考えた未来宣言を発表し「住民の防災意識を高め、津波のことを後世へ語り継いでいく」と誓った。
再建した自宅近くで食料品店を営む川戸世志子さん(67)は「元通りとはいかなくても、家が建つにつれて町にもにぎわいが戻ってくるのでは」と期待を込めた。
田老地区は「万里の長城」と呼ばれた高さ10メートルの長大な二重防潮堤で全国に知られたが、津波はその防潮堤を越えて町全体をのみ込んだ。181人が犠牲となり、建物1691軒が被災した。
更地となった市街地は平均約2メートルかさ上げされ、180戸分の宅地が完成。海抜40~60メートルの高台では、山林を造成し宅地161区画を整備した。
津波防災の要となる二重防潮堤は、大破した海側の防潮堤の高さを14.7メートルに引き上げて復旧する。本年度中に完成予定だったが、他の復興事業との調整で工期は約1年遅れている。〔共同〕