選抜出場が決まり円陣を組んで喜ぶ中村の選手たち=27日午後、高知県四万十市、小林一茂撮影
小さな市町の小さなチームに春が来た。第89回選抜高校野球大会の21世紀枠に選ばれた中村(高知)と不来方(こずかた)(岩手)の選手は、登録枠18人に届かない16人と10人。四万十市と矢巾(やはば)町の小所帯が大舞台に立つ。
選抜高校野球出場校一覧
中村の野球部員は午後3時すぎ、グラウンドで上岡哲朗校長(57)から「ふるさとのプライドを持って甲子園で戦って下さい」と連絡を受けた。中野聖大(せいだい)捕手(2年)は「期待の半面、先生の報告を聞くまでは信じられんとドキドキでした」と喜んだ。
学校は高知県西部に位置する四万十市にある。1977年、プロ野球阪急で活躍した山沖之彦投手を擁し、選手12人ながら選抜に初出場し、準優勝。「さわやか二十四の瞳」と呼ばれた。山本泰生(たいせい)主将(2年)は「先輩たちが成し遂げた偉業のおかげで注目された。一戦一戦勝ち抜いていきたい」と意気込む。チームは今回も選手16人で挑む。
同市は少子高齢化、過疎化が進む。練習試合は片道2時間半かかる高知市まで行く。グラウンドもほかの運動部と共用のため、週に2回しか使えない。横山真哉監督(54)は「人数が少ないため、1人がたくさん練習できる。ハンディと思わずやってきた」と言う。
横山監督は、食事や筋トレで科学的要素を取り入れて強化。昨夏の高知大会は準優勝し、昨秋の県大会では優勝した。OBも甲子園での活躍を期待する。40年前の右翼手で同校教諭の田野高さん(56)は「40年は長かった。がんばってほしい」と激励した。「三十二の瞳」の快進撃となるか、地元の期待は膨らむばかりだ。(森岡みづほ、堀内要明)