陸上男子400メートルで世界記録を更新し、金メダルを獲得した南アフリカのファンニーケルク=田村剛撮影
陸上男子400メートルで17年ぶりに世界記録を更新し、金メダルを獲得した南アフリカのファンニーケルク(24)が朝日新聞の取材に応じた。母は国内トップの陸上選手だったが、アパルトヘイト(人種隔離)政策をしく国への制裁で、五輪への出場機会を得られなかったという。「母に喜んでもらえてうれしい」。歴史を乗り越えて2人で歓喜を分かち合った。
リオオリンピック
8人が勝ち進んだ14日の決勝。第8レーンのファンニーケルクがゴールに飛び込んだ。43秒03。1999年に米国のマイケル・ジョンソンが打ち立てた世界記録、43秒18を追い抜いた。「本当にすばらしい瞬間だった」と言う。
陸上100メートル、200メートルの選手だった母オデッサさんは、人種隔離政策のもと、世界への扉が閉ざされた黒人用のグラウンドで走り続けるしかなかったという。民主化に向かう動きを受け、国際オリンピック委員会が南アの五輪参加を認めたのは92年のバルセロナ大会から。ファンニーケルクが生まれた年だった。
夢にまで見た五輪で走るわが子を、オデッサさんはスタンドから見届けた。「すばらしい瞬間に立ち会えた。母として誇りに思う」。一方、ファンニーケルクは早くも次の東京五輪を見据える。「まだ4年ある。より高いパフォーマンスができるよう、準備したい」と話した。(佐々木学)